THE REMAINS OF THE DAY (日の名残り)

1993年イギリス
監督: ジェームズ・アイヴォリー
出演: アンソニー・ホプキンス、エマ・トンプソン、ジェームズ・フォックス

allcinema onlineより

 E・M・フォスター原作のアイヴォリー映画と違い、ここに描かれるのは貴族にかしづく側の人間たちである。日系の英国作家K・イシグロのブッカー賞受賞作を基に、一人の侯爵(J・フォックス)の忠実なる執事が、自らの仕事に完璧を成すため、女中頭への恋心を断ち切り、老境の父に侯爵の身の回りの世話ができないと知ると情け容赦なく掃除係に格下げしてしまう、そのストイシズムを冷徹に描く。無論、彼は自分独りきりになるとそんな己を呪う。名優ホプキンスの独壇場である。恋を知らぬ彼は安っぽい恋愛小説に慰めを得、それを女中頭のE・トンプソンに見つかり頬を赤らめる。結局、彼女は彼を待ちきれず、彼の友人と結婚し町を去る。侯爵は容ナチ的で、彼はそれを疑問に思うが執事の立場からは何も言えない。そして戦後、もろもろの非難を浴びた侯爵は傷心のままこの世を去る。ようやく自由を感じた彼は女中頭を訪ねるが(その旅の解放感と彼が口にする自己否定的な嘘は印象深い)、既に離婚していた彼女の返事はつれなかった。侯爵の屋敷に新たな買い手(アメリカの富豪=C・リーヴ)がつくと、再び彼は執事として雇われる……。格式を重んじる貴族社会の内実をロマンティックであると同時に否定的に描く、アイヴォリーのスタイルにようやく得心できた感じ、それも物語の良さに多くを負っている。

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